2015年07月05日

滋賀県の民話 比叡山の七ふしぎほか

滋賀県の民話―比叡山の七ふしぎほか (県別ふるさとの民話 (42))
滋賀県の民話―比叡山の七ふしぎほか (県別ふるさとの民話 (42))

児童書だが、ふと読んでみた。

割と女性の人柱の話とか、信仰が熱くても助かってなくて観音力意味ねえじゃん!みたいな話が多いのだが、逆にそういう理不尽で無惨なストーリー展開ほど民話としての原型に近いものだと思う。

本当は恐ろしいだの怖いだの言われるグリム兄弟の「子どもと家庭の童話」も、元々は学術的にフォルクスメルヒェンを集めたもので、口承に近い形だったのを、1812年当時ですら子供向けでないって批判されて、再販されるうちに当のグリム自身も「やっぱコレはまずいでしょ、アウトだよな…」ってのは削除って形で創作のクンストメルヒェンへと版を重ねる毎に修正されて行った結果だ。

本当は恐ろしいグリム童話 (WANIBUNKO)
本当は恐ろしいグリム童話 (WANIBUNKO)

この書籍も子供でも解り易いように平易な言葉にはしてあるものの、方言を織り交ぜるなどして標準語からはずれた記述をしており、一体誰に何をどういう形式で残して伝えたいのか?という面でターゲットや形式がブレブレである。

一方で、だだぼし(ダイダラボッチ)による富士山と琵琶湖の地形形成の話から、明治時代のトンネル工事の怪異や、文明開化で近江牛をすき焼きにして初めて食べる話など幅広い収集がされている。

極上近江牛 しゃぶしゃぶ用、すき焼き用 各500g
極上近江牛 しゃぶしゃぶ用、すき焼き用 各500g

これも情報とのランダムエンカウントの面白さだが、雷と河童が同時に出てくる珍しい話があって、俺のしょーもない疑問に対するヒントの一助になった。

俺の「河童は尻子玉をとって一体どうするのか?」という長年の疑問は、水木しげるによれば「抜いた尻子玉は税金として竜王に納めるともいわれる。」って事で、成程、租税だったのか…でも竜王は尻子玉を集めて一体何に?という何の解決にもならない説をこないだ見つけたのだが

>水木しげるの世界幻獣事典(1994)
http://read.seesaa.net/article/419251317.html

漠然と「火車」を検索した際にwikipediaには

>火車 (妖怪)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%81%AB%E8%BB%8A_%28%E5%A6%96%E6%80%AA%29

>河童が人間を溺れさせて尻を取る(尻から内臓を食べる)という伝承は、この火車からの影響によって生じたものとする説もある


ってのをこれもたまたま見つけた。

俺的には先のエントリにも書いたが溺死体の肛門が弛緩して開ききっている現象とか、悪食のウナギは何でも食うのでアマゾン川のカンディルよろしく土左衛門の外皮を食いちぎるのではなく肛門から入り込んで内臓を食った後のものを人間がみつけて「尻子玉が抜かれてる」って言ったのだろうと俺は科学的に解釈する。

そういう考察もあって、全くメジャーじゃない火車の方が、広域に分布して各地で共通項も多い河童の伝承側に影響を与えたっていう村上健司の妖怪事典の説は文化史や民俗学的にも、データやロジック的にも何の論拠もない=正に論外だなと思った。

妖怪事典
妖怪事典

一方で、俺のもう一つの疑問というかこれは多分そうなんだろうって絵本の知識で思ってた、
「雷はヘソを取った後はどうしてるのか?」 → 俺の知ってる用途は食用、
って事の裏付けがこの書籍で見つかった。

「かみなりのすきなへそ」という草津市の昔話では、落ちてきた雷の子供がガタロ(河童)に食べ物のヘソとして代わりにタニシを勧められ、雷はこっちの方が美味しいから民家ではなく田んぼに落ちてこっちのヘソを取る事にしようって事で、この地方では雷は田に落ちるって伝承だった。

俺のソースもあやふやな知識の裏が撮れて確信に変わった瞬間だったのだが(大袈裟)

でもそうすると「雷がヘソを取りに来るから隠す」という伝承の本来のメリットだった「雷が鳴る時は気温が急激に下がるので下腹部を冷やさないようにする」って行動側はこの地域では実践されなくなってしまったのでは?とも。

中国だとよくあるんだけど実証を怠って仮説に仮説を強引に積み重ねた結果、悪影響にしかならないような空論になりがちなのと同じだなーと。本来は暦や気象観測の技法のひとつだったものを、占い側に注力し、強引に陰陽だの理論側に合わせすぎた結果、八卦や風水は時代を経る程に科学から遠のいて俗悪な迷信になり下がったのと同じ。水銀やヒ素を飲んで不老長寿の薬とかホントオメデタイ。むしろ悪質な俗信振りかざすバカほど自滅全滅して欲しい。

俺は昔の人の心理的なものを汲み取ったり、科学的アプローチで伝承を解析したりが好きなので、どーでもいい尻子玉について色々こうやってチラシの裏に書き記してる訳だが、科学とオカルトって対象的なものだけに両方に造詣が深い人ってのもそうはいないんだよね。日本では古くは井上円了にはじまり怪異の正体を科学的に明かすって事も行われてるけど、逆に現在でも疑似科学での詐欺とかもあるしねえ。

井上円了と柳田国男の妖怪学
井上円了と柳田国男の妖怪学

posted by wolf_howling at 05:38 | Comment(0) | TrackBack(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

最近の記事