2016年05月29日

藤子・F・不二雄大全集「ユリシーズ」

ユリシーズ (藤子・F・不二雄大全集)
ユリシーズ (藤子・F・不二雄大全集)

こないだ読んだマシリトインタビューで







逆に今のマンガが如何にダメかって明確な理由としてここが凄く腑に落ちて、藤子Fも相当な「読みやすい漫画」技術だぞ!と思い立って、なるべく古めの作品を読んでみた。

収録作品は

ホーマーげんさく の「ユリシーズ」。
偉人伝としての「しょうねんリンカーン」。
ロバート・マイケル・バランタインの西部劇もの「名犬クルーソー」。
フレデリック・マリアット原作とする「少年船長」。

当時はマンガを悪書とする排斥運動の最中、子供の為になる!って大義名分が欲しかった模様で、学習雑誌付録としてハードカバーの単行本をつけたらしい。そして原作も海外の名作なんですよーって事だった模様。

その影響かユリシーズは奥さんが居るのにキルケーと関係もったり、王位を狙う貴族共を強弓で皆殺しってシーンはおろか、サイクロプスの目を潰すとかも残酷って事で酒壺を被せて酔っ払わせるというマイルド改変を意図的にしている。原作のオデュッセウスの奥さんペネロペを母親に、息子のテレマコ(ス)を弟としている。
この改変について藤子F自身が他紙「付録漫画傑作選 別冊」(1985年、国書刊行会)での解説あとがきで「ホメロスさん、当時に読んだ子供達、すみませんでした」って謝ってるんだけど、紀元前8世紀に実在したかも解らないホメロス相手の半分は冗談であろうとも、原作を変えてしまっている事に対して子供達に間違った知識を伝えてしまう事になる事への謝罪とは、やはり真面目な方なんだなあと。今日日の原作破壊実写版だのやらかしても反省どころか開き直る自称映画監督だのと世界レベルで通用してマンガ史に残る人はやはり大違いだ。

そして、巻末解説の里中満智子が「改めて教えられた「マンガの基本」」と書いているように、おそらく現代の幼児期の子供達が読んでもマンガの展開内容、解り易さと迫力を伴った表現力は本当に流石だと言える。
絵柄が古いって言い方をする人が居る場合は普段見慣れた絵柄があって、絵のキャラクターデザインや構図として見ていないからだと思う。

リンカーンが幼少期に母親亡くして、新しいお母さんとかって話はリンカーンに全く興味がない俺としてはこの年になるまで知らなかったよW
最初に手にした書籍がワシントンの話だったそうで、人生何から最初に影響を受けるかってのは大きいのかもねと。そして各話タイトルがついているのだが「にんげん売ります」っていうのは逆にシンプルだからこそインパクトを狙っているものだと受けとれる。但し、これまた子供向け修正だか、幼少期や青年期スポットで、大統領に何故なれたかとかは絵物語風のレイアウトで2ページでざっくり語って、同じアメリカ人に暗殺されたって都合の悪い所は伏せられてた。

まあそれ言ったら西部劇なんてのは差別の塊だからねえ。

ピーターパン、ホームズの冒険、名犬クルーソー (世界少年少女文学全集9(イギリス編 6))
ピーターパン、ホームズの冒険、名犬クルーソー (世界少年少女文学全集9(イギリス編 6))

名犬クルーソーの原作内容は知らないけど、インディアンとは敵対しているもののバトルはあっても殺し合いにはならず、これも表現は無くマイルド化されてんだろうなあと思った。


>「藤子・F・不二雄大全集 ユリシーズ」 第4期刊行開始!珍しい伝記や原作あり作品4編収録!!
http://3f.ldblog.jp/archives/24920172.html

>多くの海洋冒険モノを発表しているフレデリック・マリアットの「ミスター・ミジップマン・イージー」を原作としたと思われる「少年船長」


>フレデリック・マリアット
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%87%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88

海洋冒険活劇だけど、確かに原作者側の作品評価もその通りで展開は随分と御都合主義だなーと。
ただ、子供が幼い時期にさらっと読むものとしてはこれで良いんじゃないかとも。

わざわざ主人公を幼い子供にして感情移入してもらおうというのが当時のマンガのヒットを狙う手法だった感じもするが、現代の子供は子供が活躍する事には逆に固執して無いというか、年齢にもよるだろうが活躍するのは別に中高生の範囲のキャラなら感情移入ができるようになってるような気もする。

通して、マンガの基本表現と、子供の読み物である事を意識して作られている流石、藤子Fという感じだった。
あちこちに手塚治虫の影響も判るのだが、子供達が読む「わかりやすい」マンガが本当に減ってきてる現在、逆にこれらを子供の目に触れる誌面に再録してみるとかしても良い位にマンガ家にとっても御手本だと思う。

ピーター・シムプル 上 (岩波文庫 赤 288-1)
ピーター・シムプル 上 (岩波文庫 赤 288-1)

posted by wolf_howling at 21:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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