2017年08月04日

アラビアンナイト〈4〉 ― 空飛ぶ馬ほか (講談社 青い鳥文庫)

アラビアンナイト 4―空飛ぶ馬ほか (講談社 青い鳥文庫)
アラビアンナイト 4―空飛ぶ馬ほか (講談社 青い鳥文庫)

2巻目を読んだ時に早々に腑に落ちない感じがしていたが、

>アラビアンナイト〈2〉まだ知らないふしぎな国へ (講談社 青い鳥文庫)
http://read.seesaa.net/article/452210848.html

>訳者が何を底本にしたのかってこと。


については、この巻でやや判明。

冒頭の話が「空飛ぶ馬」つまりは有名な「空飛ぶ木馬」。
だから、これは厳密にはアラビアンナイト、千夜一夜物語ではない事が判った。

空飛ぶ木馬 (アラビアン・ナイト)
空飛ぶ木馬 (アラビアン・ナイト)

空飛ぶ木馬は元々「中国の話」だ。
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/08/10.htm

そして相当な改悪がされているのでキャラクターやそれらが性格からとっているであろう行動への違和感があまりに酷い。
様々な国王が姫の面倒をみたのに王子が恩を仇で返す形で大口叩いた後に攫う事の繰り返しだし、
馬を発明した職人の扱いは酷すぎる。むしろ責められる対象は王子一人じゃねえか。
この点、訳者が妙に子供向けにぼかそうとして弄り回した結果、支離滅裂になっている感じも強い。

さて、そもそも。

千夜一夜物語はそもそも千話分は無かった。


「アルフ・ライラ・ワ・ライラ」=アラビア語での千一夜は、お江戸八百八町とか、白髪三千丈と同じで「いっぱい」って事の「誇張表現」だ。

それをフランス人のアントワーヌ・ガランが直訳した挙句、アラビア語には写本が存在しない話が無理やり混ぜられた。

・シンドバッドの冒険、
・アラジンと魔法のランプ、
・アリババと40人の盗賊、
・空飛ぶ絨毯、

これらは全て元々は別の話だ。アラビア語の写本すら実存しない。

酷いものにはアリババ写本と言いながら偽写本だったり、そもそも写本自体が存在しないものまである。

つまりは多分にこの講談社の青い鳥文庫曰くのアラビアンナイトはガラン版か、元々関係ない話を含めて最も収録数が多いバートン版などがベースであろうと思われる。
ところがガラン版はフランス語で書かれており、バートン版は英語だ。

この訳者は
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062854238

>メキシコ大学でスペイン語を専攻ののち、1972年より京都外国語大学アラビア語科、田中四郎教授の研究室に学ぶ。その間、アラブの人々の生活・風俗習慣についてのエッセーを多数発表。


この方、「研究室に学ぶ」とだけあるから院卒どころか履修してるかすらもこれでは学位が明確じゃないから判らない。

もしアラビア語から訳したと想定すると、多分にアラビア語刊本としては

・ガラン写本をベースにしたカルカッタ第一版
(フランス人がフランス語で書いたものをアラビア語にした)

・バートンが本を出した後にマカン写本をベースにしたとされるカルカッタ第二版
(イギリス人が英語で書いたものをアラビア語にした)

の、どちらかではなかろうか。
にしても、写本と称したものの寄せ集めをヨーロッパ人が作って、それをアラビア語に戻したら、往復の二重翻訳な上に、それを更に日本語に訳したとしたら、もう原型なさすぎじゃねえのかと。
しかもマカン写本は現存すらしないって酷さなんだけど。

この点、岩波の方はガランのフランス版が底本って事は書いてはある。講談社、これでいいのか?

>アラビアン・ナイト ディクソン編 岩波少年文庫(上)
http://read.seesaa.net/article/450286476.html

調べてみたら、この訳者と天野喜孝のイラストで「アラビア物語」ってのが出てるなー。

アラビア物語〈1〉みどりの文庫 (講談社 青い鳥文庫)
アラビア物語〈1〉みどりの文庫 (講談社 青い鳥文庫)

「アラビア物語」ってのは88年刊行で、
ムフシン・マフディーがガラン写本の研究をしてガランが続編を勝手につぎ足す前の写本を訳したのが1984年だから、流石にやべえと思って「アラビアンナイト」って名称は外したのかな?
でも、アラビアンナイトのシリーズの方も、この4巻は88年刊行で、しかも7巻まで続いてて92年まで出されてるってのがなんなんだかねえ。

アラビアンナイト〈7〉 (講談社 青い鳥文庫)
アラビアンナイト〈7〉 (講談社 青い鳥文庫)


という事で、子供向けとされている本だからこそ、ちゃんとしとけ!って話はこれ位にしてレビューへ。

「漁師と魔神の物語」
「ロバの知恵」
「空飛ぶ馬」
「アブダッラーと托鉢僧」
「キツネとオオカミ」
「くつ屋のアキーフの話」

の6編。

イソップ童話風の動物説話ですら、その中に複数の話を押し込むとか、どんだけ無理な継ぎ足し編集をしてたんだ昔のアラブ人って感じは毎度する。

イソップ寓話集 (岩波文庫)
イソップ寓話集 (岩波文庫)

やや長めの「漁師と魔神の物語」は、お馴染みの壺の魔人の話で終わるかと思いきや、まあ引っ張る引っ張るW

そして「くつ屋のアキーフの話」はこれも切り貼りしてツギハギをあてた感はするものの、逆に妙な超展開をみせている感じで、これは逆に感心した。

そういえばアラジンに出てくる魔人はランプの方が有名だけど、

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原典側では指輪の魔人の方が圧倒的に多い。

逆に壺から何度も出入りする魔人は公式側には居ない。

でも、日本人だとハクション大魔王のせいで魔人は壺の中からーって感じもあったりする?W

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posted by wolf_howling at 06:01 | Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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