2017年08月25日

アラビア物語〈1〉みどりの文庫 (講談社 青い鳥文庫)



1984年のムフシン・マフディーの研究で明確にされたが
アラジンと魔法のランプ、
シンドバッドの冒険、
アリババと40人の盗賊、
空飛ぶ絨毯、
などはアラビア語写本が存在しない。
つまりは原本のアラビアンナイトには含まれていない。
フランス人のガランが千夜一夜物語=1001話に無理やりするために、別の話を無理やり混ぜたものというのが現在の専門家の通説だ。

The Thousand and One Nights
Posted with Amakuri
Muhsin Mahdi
Brill Academic Pub


だが川真田純子が講談社 青い鳥文庫で「アラビアンナイト」と称していたものを出しだしたのが1987年。



事前に準備をしている期間もあっただろうから引っ込みがつかないからか、そのあと死ぬ前年の1992年まで7冊をアラビアンナイトと称して出してた。



とはいえ、アラビア語も数語しか知らない俺でも、それは変だろうと思うわけだから、
そのまま何でもかんでも混ぜて出すのはマズイって事は「専門家」なら普通は思うはず。

だからか知らないが、この本はアラビア物語と称して1989年に出していて、ソースも「みどりの文庫」という「アラビアンナイトは別の物語集」とソース明示をしている。

「髪の木」はしゃべる鳥に呪われて長い金髪が抜けだし、そよ風が吹くのにも怯える事になる女王の呪いをとく話。その描写からして、やはり「翻訳」ではなく川真田純子の「脚色」が非常に強い感じが解る。

「知恵の糸」に関しては翻訳者の論理思考能力が問われる位に酷いお粗末で、理屈が通っていない。
この翻訳版と称しているものだとスカラベに細い糸、アリに絹糸をそれぞれ結び付けている。
が、そうしたら2本の糸が塔の上部に到達する流れだけど、別に絹糸→木綿糸→ロープって切り替えて引っ張り上げるだけだったら絹糸1本が最上部までゴールすればいいだけだよな?
スカラベから糸を受け取ったって書いてあるが、アリの方に下から結ばせた糸には何の意味が?そして何処に消えちゃってんの?と。
これ訳者がまったくパズル的な思考ができてないで出鱈目に訳して子供に読ませる本にしてるし、挙句は編集者も明らかに変な事に気づかずに放置して販売してるって誰もマトモに仕事していないな。

知恵がない誰かさん達に代わってトリックを解き明かすに、
多分に準備したのは
・蜜を塗ったスカラベ、
・絹糸を結んだアリ、
・絹糸に結ぶ木綿糸、
・木綿糸に結ぶロープ
だろう。

蜜を塗ったスカラベは下からアリに追い立てられるので上へ上る。
絹糸を結んだアリは蜜(とスカラベ)を追いかけて上へ上る。
後は絹糸→木綿糸→ロープの順に手繰ればロープを塔の最上部に到達させられるってトリックだろ。
だから

・アリが絹糸を運んでくるならスカラベには糸を結ぶ必要はない。
・アリに追われたスカラベに糸を引かせるのならアリに結ぶ必要はない。


という事に普通のオツムがあれば気づくだろ。

多分に「小さくて力の強いアリに運ばせる案」の方が元の童話なのだろうが、
この訳者と名乗る作者は、到達したのがスカラベの方が見栄えがすると思ったのだろう。
かくてこの話だと糸は2本しか準備させてないのに、何故かそれぞれ2本とも塔の上に運ばせてしまっている。
意味ねえ!
ばっかじゃねえの?

ちゃんとした読解力があって正しい内容を把握できる翻訳能力がないのではないだろうか?
もしくは例え小さな子供でも論理思考能力さえあれは「内容がおかしい」事に気づくのに、原稿にして活字にして印刷して店頭に並べ販売してたわけだ。
そんなのを子供に読ませるだって?
何考えてんだ講談社?何も考えてないとしか思えない。


この頃の天野喜孝の挿絵は美しくカッコイイのや、綺麗で丁寧な作品や、可愛らしいタッチのバリエーションもあって良いだけに、非常に勿体ない。


「レモン娘」は、なりすましの話なんだけど、これ多分、川真田純子がラストは改変してんじゃねえのかな?
というのも魔法でこの見た目にされたといって姫と入れ替わった女が嘘を言ったものを「焼き殺せ」と言って「お前自身がそうなるのだ」って言われる下りの意味が通らない。
というのもイスラム教では火葬されただけで地獄行きとなる教えがあるので遺体は保存する。
なのでイスラム圏で「火刑」にしたとすれば死刑の中でも非常に重い罰し方なのが俺は判る。
なのに、この本の冒頭にコーランについてどうのまでかいておいて、そこをぼやかした挙句、助命までしてしまっている。

なりすましと厳罰での死罪というと簡単に想起できるのがグリム童話だ。



中でも「ガチョウ番の娘リーゼル」の内容が似ている。
王女になりすました侍女は自らが提案した罰で処刑される。

>がちょう番の女
https://www.grimmstories.com/ja/grimm_dowa/ga_choban_no_onna
>すっ裸に服をはぎ、中にとがった釘をうちこんだ樽にいれ、その樽を2頭の馬につなぎ、死ぬまで、あちこちの通りを引きずりまわす


これを子供向けの編集とみるか、宗教観についてわざわざ説明した挙句での身勝手な改ざんとするかってのはあるが、唐突過ぎて子供が読んでも違和感あるだろ。
むしろカタルシスもねえし、グリム童話の側程には日本人の子供達にとってもエグくはねえだろ。

グリム童話といえば、この本に収録されているのに似てるのが他にもある。

「グールの毛」という話がグリム童話の「金の毛が3本生えた鬼」や「怪鳥グライフ」だ。

>金の毛が3本生えた鬼
https://www.grimmstories.com/ja/grimm_dowa/kin_no_ke_ga_oni



>怪鳥グライフ
http://www.ab.auone-net.jp/~grimms/grimm125/griffin.html

怪鳥グライフの方は明らかに本来2つ以上あった話をくっつけたであろう、小人は何処行っちゃったの?って展開なのと、怪鳥グライフ=グリフォン、グリフィンの奥さんが人間(もしくは魔女?)なのは違和感ありまくりなので、多分にドイツに話が持ち込まれた際に人食い鬼のオーガや巨人をドイツ人にとってもっとインパクトがあるモンスターであるグライフに伝承されるうちに変化させたのだろう。
アラビアのグールの側は後だったか先だったかはもっと数多くの類話を集めて比較してみないと解らないが、D&Dなどではアンデッドとされているもののグールは元々のアラビアの伝承では変身が行える魔物で人に化けて人を襲って食べたりするものではあるものの「金髪」ってのを強調してある所に違和感がある。

ダンジョンズ&ドラゴンズ モンスター・マニュアル第4版 (ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック)
Posted with Amakuri
マイク ミアルス, スティーヴン シューバート, ジェームズ ワイアット
ホビージャパン


アラブ人は白人の奴隷も使っていたし、中には金髪の人もいただろう。
とはいえ、幾ら変身可能な化物であるグールにせよ、金髪グールにはやはり違和感があるので、
多分にヨーロッパの何処かにオーガを元にした話側が先にあって、それがドイツに入ってグライフになり、アラビアではグールとされたのではなかろうか?


posted by wolf_howling at 03:05 | Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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