2018年06月17日

「ファファード&グレイ・マウザー」シリーズ2 死神と二剣士 (創元推理文庫) フリッツ・ライバー/浅倉久志 訳|東京創元社

死神と二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー2> (創元推理文庫)
死神と二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー2> (創元推理文庫)

1巻目のレビューの時に、他のファンタジー作品の執筆と掲載順事例を挙げて散々書いたが

>「ファファード&グレイ・マウザー」シリーズ1 『魔の都の二剣士』フリッツ・ライバー
http://read.seesaa.net/article/459270620.html?seesaa_related=category

本来1939年初出のTwo Sought Adventureを1970年の書籍化にあたって改題した『森の中の宝石』 (The Jeweles in the Forest)を一番最初に読めれば、このシリーズはすんなりと受け入れられたんじゃないかなーって気がする。

単行本化にあたって時系列順に並べなおしたんだろうけど、コンパクトに纏まってる短編の方が読みやすくて、むしろ作家や翻訳者が手の込んだことをしようと思ってる長編とか、送り手側の気分の問題であって読者側のニーズと関係ない。

だから1巻目よりは短編集の此方の方が読みやすい。

魔の都の二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー1> (創元推理文庫)
魔の都の二剣士 <ファファード&グレイ・マウザー1> (創元推理文庫)

訳者後書きによると1940年の『凄涼の岸』 (The Bleak Shore) が元々は二人が死んでおしまいって話だったのをウィアード・テイルズ誌の編集者が面白くないってボツ食らって売れなかったので、ラストを改変してアンノウン誌に持ち込んだら売れたって、アタリマエだな。

しかも其処で二人を殺しちゃってたらファファード&グレイ・マウザーはシリーズになりえなかったという。

で、全体的な脈絡はやや後付けながらも、コミカルなところも少しあったりするんだけど、1巻目の陰鬱さと、この巻の冒頭、そして1970年に書き下ろされた『痛みどめの代価』 (The Price of Pain-Ease) の理由はフリッツ・ライバーの奥さんが死んだかららしいけど、
それも娯楽作品が読みたい読者側からすれば「知ったことか」だよなあ。

で、「ネーウォン」の地名を日本語にしてある世界地図は1巻にはあったものの、ロサンゼルスをモデルにした都市「ランクマー」の地図が欲しいのになあって思ったら2巻冒頭には載ってるので、これ1巻にも載せとけよと思ったけど、1巻の『凶運の都ランクマー』 (Ill Met in Lankhmar)に書かれている通りの地名とかは相当に漏れてるので、なんとも中途半端な出来だ。
多分に1970年作品群の為に急にメモ含めてこしらえたんだって事もそれで判る。

そして翻訳版のコレだけど、P.178にはクォーマルとあるんだけど、世界地図の左下にはクォーモールって書かれてるんだよなー。
翻訳家の浅倉久志や編集者がちゃんと仕事をしてない証拠がこうやって形になって残るってわけだ。

とまあ色々不服はあるんだけど、俺の興味はTRPGのD&Dがこのシリーズに大きな影響を受けてるかを読み取っている感じ。
実際、AD&Dにはランクマーシリーズとかもある。

Lankhmar, City of Adventure
Lankhmar, City of Adventure

この巻だと『七人の黒い僧侶』 (The Seven Black Priests) でスリープ呪文とか、
『珍異の市』 (Bazaar of the Bizarre) にリビングスタチューが出てくるとかが顕著。

そしてマウザーに対して命令を出す「目なき顔のシールバ」との関係を師弟とも書いてあった点に注目した。
マウザーは小柄の盗賊なのだが魔法についても心得がある。D&Dのシーフ像にマウザーが大きく影響を与えているであろう事を推測するのは容易い。

そして、何故CD&Dのシーフがスクロールを読んだり、失敗確立はあるものの魔法をスクロールで使える設定なのか?を、
シーフは弱いとか使えないクラスだの戦闘にしか目が行かない和マンチどもには散々いわれてたにせよ、アメリカ人もバランスをとるためにそうしたのか?それにしては黒箱で技能の成功確率が100%を超えてしまったりと全く先行きを計算したり、チューニングしながら作られてるゲームとは思えない位には「雑」なんだけど?と俺は思っていたのだが、
何のことはない、シーフ像に影響を大きく与えたマウザーが魔法の心得があったのをゲーム上で再現したいって奴がいたせいに過ぎなかったのだろう。

この巻の『盗賊の館』 (Thieve's House) にも出てくるがD&Dがシーフギルドって組織の存在や重きをおいてる一方で、ルルブにはさして描写されてないのは、当時のユーザーサイドもファファード&グレイ・マウザーを読んでて、説明をいちいちしなくてもいいだろみたいな雑な作られ方をしていたのだろうなとの推測もできる。

ファファード&グレイ・マウザーが再販されたのは2004年で、90年代にD&Dを遊び始めた日本人の子供からすれば、まったくの説明不足も甚だしいのだが。
おかげでその後、何十年もしてから調べて納得なんて酷い有様だ。

そして、自分なりにググってみては、AD&Dでシリーズが出てた事とか、ヘルボーイ作者のマイク・ミニョーラが、ファファード&グレイ・マウザーのアメコミを描いてた事を今更知ったりするわけだ。

Fahfrd y el ratonero gris/ Fafhrd and the Gray Mouser
Fahfrd y el ratonero gris/ Fafhrd and the Gray Mouser

posted by wolf_howling at 06:29 | Comment(0) | 書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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