2019年07月30日

「妖精ディックのたたかい」とホブゴブリンの謎

妖精ディックのたたかい
妖精ディックのたたかい

変な縁でというか、古いアニソン集アルバムを聴いてるうちに「妖精ディック」なるアニメがある事を今更知る。

1992年にNHKのBSで放送されていたもので、中尾隆盛さんが主役のディック役でOPも歌っている。

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で、どんな作品って検索したらキャサリン・ブリッグズが原作じゃん!と。

http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=235580

キャサリン・ブリッグズといえば妖精辞典。
なので読んでみたのだが、俺は今回の順についてはラッキーだったなと。

妖精事典
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アニメは瑞鷹が元受けでグルーパープロダクション制作だったのだが、グルーパープロダクションは稲中アニメ版を創った翌年に解散してる。

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そのせいか、「妖精ディック」は板にもなってない様子。

何故かスペイン語版がYoutubeにUPされてた。てことは海外版も創られてるし、ある程度は視聴されてるって証拠だよね?



でも映像を観るに、名作劇場やディズニー風の寄せ集めっぽいアニメにしてるけど、本当のこの作品の魅力は其処じゃないのよなーって原作読んでから映像観たから思った。
でもまあ、パッと見で、どのキャラだか判別付く位にはキャラデはできてるんだけど、
もうちょっと妖精ってのは怪しい=暗さが必要な存在なのよなーと。

何で今回目にした順がラッキーだったかというと、俺が妖精辞典を読んだのも数十年前だが、その下地での妖精知識やイングランドについての歴史知識が無いと、妖精ディックの良さは10分の1も解らないと思う。

俺は巻末解説を気にしないでも読める位には、清教徒と戦争ってキーワードがあれば、クロムウェルが暴れた頃の時代だと解るし、

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妖精に化かされて迷った際には洋服を裏返しにするのは、日本の夜行さんに会った時に頭に草履を乗せる系の逆転系まじないだとも知ってる。

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この作品を読みはじめて先ず感じた懐かしさは、松谷みよ子の民話知識を元にした創作である「龍の子太郎」や「まえがみ太郎」の良さを感じさせたのだ。

龍の子太郎 [DVD]
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まえがみ太郎 (偕成社のAシリーズ 1)
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民話は多くの人の語り継ぎによるソーシャルフィルタリングを行われたものであり、それを繋げている創作は良いとこどりの物語になるからだ。

妖精物語という面もありながら、どちらかというと17世紀中頃のイングランドでの生活を感じさせるファミリードラマでもある。

時代は全然ちがうけど、実写化するならダウントンアビーみたいな風にもできる。

ダウントン・アビー シーズン1 ブルーレイ バリューパック [Blu-ray]
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ロンドンに住んでいた者は妖精のまじないを気にしないとか、清教徒は賑やかにクリスマスを祝わないとか。
何より、ブリッグズが描きたかったのは当時の女性の生活ではなかろうかなと。
それには服を泥だらけにする御転婆な女の子たちに始まり、貴婦人やメイド、継母や姑、そして悪役である魔女の扱われ方まで含んでいるとも思う。
確かにキャラクターの中には、優しいのや正直者とか明白に役割が出ている者達もいるが、大抵のキャラは失敗も色々とするし、意地が悪い所があるように見えて、その言動も心の弱さや寂しさ、悲しみなどから来ている行動のようにも思える所が印象深い。

言うなれば成り上がりのロンドンから来た商人が郊外に家を買って農場経営をする家庭には、農夫たち使用人が色々いるわけで、
この本が書かれた87年には下働きや下女って書かれ方がメイド達もされている。

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その頃の日本はバブルだったんだけど、メイド喫茶なんてライトな水商売とかは電気街だったアキバでも幅聴かせてなんてなかったからねえ。

バブルと言えば気になるのがこの本の装丁。
エントリ最上部に貼りつけてある表紙イメージを見て貰えれば一目瞭然だが「地味!」
しかも、本文読んでいれば「ああ、このシーンか」って解るけど、この絵だけ見せられたら何が何やらだろ。
挿絵含め起用する版画師について口出した翻訳者の山内玲子と岩波書店の編集者は「本を売る気あんのか?」と。

グッバイ・クリストファー・ロビン:『クマのプーさん』の知られざる真実
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加えて翻訳についても色々と言わせて貰う。

まずタイトル!

原題は「Hobberdy Dick」まあこれだけだと日本人には何が何やらだわな。
でも「たたかい」って要るか?

岩波が全然戦争してないのに「ゲド戦記」ってタイトル詐欺で売ったパターンを模倣してるように感じて双方とも不愉快な題名改悪だ。

ゲド戦記(6点6冊セット) (岩波少年文庫)
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3章目冒頭の「ロビングッドフェローの一生」の詩で「パッチ」って書いてある。
これ、どうしたってPuck「パック」の間違いだろ!ロビン・グッドフェローってパックの事だし。
しかも6章目のニンフィデイァ引用側では「パック」って書いてある!

魔女が列挙する悪魔でサタネル、アザゼル、バルゼバブって書き方はまあいいとしよう。
でも、大魔王とされてるラダマンサスって、多分にRhadamanthusとラテン語表記で書いてあるんだろうけど、日本人が耳慣れてる方を出すとしたらギリシャ語のラダマンテュスじゃねえの?

聖闘士聖衣神話EX ワイバーンラダマンティス
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これギリシャ神話知ってれば兄のミーノースと共に冥界裁判官をやってるのがラダマンテュスなので、大魔王扱いとはキリスト教圏では随分と魔界での出世をしたもんだなと思ったW

神曲 地獄篇 (河出文庫 タ 2-1)
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まあ失楽園だと、エジプト最高神のオシリスとイシスも万魔殿のメンバー入りしてたりだからなあ。

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)
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ゼロからわかるエジプト神話
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だけど、訳者あとがきに

>ブラウニーとかホブとか呼ばれる古い家に住みつく家つき妖精


って一文があって、コレがキャサリン・ブリッグズから得た知識なら、凄い価値がある!

というのも、コレで俺が数十年疑問に思ってた「ホブゴブリン」の謎が解けたからだ!

TRPGのD&D以降、「ホブゴブリン」というのはゴブリンの大型種モンスターとして扱われて来た。

ダンジョンズ&ドラゴンズ プレイヤーズ・ハンドブック第5版
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俺はゴブリンは小鬼と解るけど、ホブって何だよ?とずっと思ってきた。

妖精辞典のホブゴブリン項目には「田舎のゴブリン」みたいな説明がされており、
じゃあホブってのは田舎の意味か?って思ってたのだ。

主人公のホバディ・ディックの名称についても

>ホバディは「ホブ」を踏まえて作者がつけた名前です。


とまであるから、これは非常に確証が高いと思われる。

家つき妖精はハリポのドビーで日本人にも知名度がある存在にも多少はなっただろうけど、俺は「屋敷しもべ妖精」ってクソみたいな翻訳も大嫌い。

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妖精ブラウニーの伝承がメインだろうことは早々に判読できたので、ラストも察しがついたりもしてしまったが。

俺がこの本の中で一番良いと思ったのはグリム爺さん。
他の数百年生きてる妖精から見ても耄碌してる存在なんだけど、
いざという時は古代神だった事を思い出しで黒犬の姿を取った。
これって「ブラックドッグ」、黒妖犬という黒いムク犬妖精の事でヘルハウンドとして恐れられてた妖怪なのな。
ホームズの「バスカヴィル家の犬」とかもそういう魔犬伝承が下地。

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グリムって名前のゴブリンは彼方此方の伝承にも出てくるので、最初は気にして無かっただけに、
グリムって名前の黒犬だけは迷子を助けたりする善良な存在との妖精辞典の記述を思い出して、
「おお!そうだった!」って、
爺さんが奮い立ったタイミングに、その記述の記憶が蘇った感覚を俺の側も得たのが個人的に楽しかった。

なので、妖精学や歴史を知ってる方が読んでて面白いと思う。
童話だから子供に読ませておけ的な状態だと、ピューリタンが何かとか、イースターに何の意味がとかは逆にピンと来ないまま読了してしまうと思う。

キャサリン・ブリッグズの児童書で邦訳されているのはもう1つだけなので、「魔女とふたりのケイト」という作品も目にしてみようかと思う。

魔女とふたりのケイト
魔女とふたりのケイト

posted by wolf_howling at 06:49 | Comment(0) | 児童書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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