2019年08月01日

「トラ・トラ・トラ!」 CG無い時代だからこその迫力

トラ・トラ・トラ!  (ニュー・デジタル・リマスター版) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
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ネタバレに繋がる「あらすじ」を書くのは気がひけるけど、オーディオコメンタリのトリビアを纏めるのはなかなか面白いな。

特典コンテンツって有料配信にもない利点でもあるし。

日本語吹き替えが入ってないけど、日本軍シーン台詞は日本語だから楽に観れるな!…と思ったけど、
日本語台詞の音響状態がすこぶる悪い!
仕方ないので英語字幕を読むという本末転倒…。

これも子供時代に観たので、幾つかのシーンには見覚えあるんだけど、アメリカ版を観るのは初めてだな。
アメリカ版だから渥美清のコックの飯炊き兵のシーンが無い。

テレビドラマ版「男はつらいよ」 [DVD]
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144分位の作品だけど、インターミッションまで収録されてるとは思わなかった。
昔はこれでも長いから休憩が必要だったんだよな。
なのに今の映画ときたら平気で3時間超える作品とかがやたらあって、観る側の事を考えないで商売できると思ってるワガママなアーチスト気取りばっかりだよな。

でも完成版前の初号では4時間くらいあったらしいけど。

オーディオコメンタリで途中降板した栗沢明についての事が監督のリチャード・フライシャーから語られていた。

『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて 黒澤明VS.ハリウッド (文春文庫)
『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて 黒澤明VS.ハリウッド (文春文庫)

黒澤明が書いたシナリオは400ページ超え。
FOXのプロデューサーであるエルモ・ウィリアムズが尺を想定したところ4時間20分にもなる。
脚本をカットするようにホノルルで一度会議、次にビバヒルホテルで交渉。
黒澤が折れてカットする事に決まった。

撮影開始時に黒澤は戦艦の中にある神棚が置かれた部屋の壁の白色がこれじゃないと言い出し、自分でペンキを混ぜ始めた。
スタッフ総出でセットの壁を塗って1日目は終了。1カットも撮影しなかったそうだ。

ライブラリが映るシーンで棚の中の本が1941年よりも新しい本が入っていると言って、41年より前からある本を集めさせたりも。
この辺は例によってのリアリティへの異常な程の拘りだな。

他にも素人をキャスト起用して、スタジオの外にまでレッドカーペットを敷いてその上を歩かせて車を迎えに来させたりしていたそうだ。
黒澤は役作りの為だと言ったそうだけど、リチャード・フライシャーは次作のスポンサーになる者をおだててたのではと読んでいる。起用の意図が全く分からないとも。

でも自分側は史実っぽく見せる為にスター俳優を起床しなかったとか言ってるので眉唾もそうとうありそう。

新聞には当初候補に挙がってたのが
『夜の大捜査線』でアカデミー主演男優賞のロッド・スタイガー、

夜の大捜査線 [Blu-ray]
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『波止場』『カラマゾフの兄弟』でアカデミー助演男優賞ノミネートのリー・J・コッブ、

波止場 [Blu-ray]
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『キャット・バルー』でアカデミー主演男優賞のリー・マーヴィン、

キャット・バルー [DVD]
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『パットン大戦車軍団』でアカデミー主演男優賞を受賞したのに辞退したジョージ・C・スコット、

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リチャード・フライシャー自身も『サイコ』の保安官役のジョン・マッキンタイアやジョリー・ロード、ラリー・ヴァレーを推したとか。

サイコ (字幕版)
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結局、黒澤は体調不良という言い訳をして2週間で降板。実質はクビだったそうだ。
撮影できてて使えそうなフィルムは8分しかなかったし、結局、それは使用されなかった。

その後の候補は『人間の條件』の小林正樹、

人間の條件 Blu-ray BOX 全六部
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市川崑、

市川崑 4K Master Blu-ray BOX
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岡本喜八、

日本のいちばん長い日 Blu-ray
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中村登、

<あの頃映画> 古都 [DVD]
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三船敏郎にまで打診されたが、

MIFUNE:THE LAST SAMURAI [DVD]
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結局は『宇宙戦艦ヤマト』の監修なども後に務める舛田利雄と

宇宙戦艦ヤマト DVD MEMORIAL BOX
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深作欣二となった。

仁義なき戦い Blu-ray COLLECTION
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リチャード・フライシャー曰くは海軍は協力的だったそうだけど、
真珠湾攻撃テーマ映画の撮影に軍が協力するとはけしからんと議会で問題になったそうだし、
コメント聴いててリチャード・フライシャーが正直に何でも話すとは限らねえなって感じも受けた。

というのも、海軍に金は払ったけどって話をしてるけど、それは
1969年5月に議会で問題視される。
1969年6月14日に国防総省が商業映画に協力する際の基準を設ける法案を提出。
それまでは無料で艦船も航空機も無料供与されていたから、税金の使い道として問題にされたのだ。
1969年12月10日に$1,900,000を払う対応をFOXがしたので、
結局、問題にされて後から払った形だからな!

リチャード・フライシャーは船の燃料も、水兵の給料に当たる分も払った。
一番かかったのは「後でわかったのだが」荷物運びに使ったタグボートだって言ってる。
つまり、自分でも後付けで払ったって言っちまってる。

倉庫の爆発シーンでは壊す予定だった倉庫を使ったので、海軍を手伝ったとまで、このオッサン吹いてるくらいだからねえW

ただ、この映画の凄いのはゼロ戦の撮影に本物を使いたかったけどなかったので、T-6 テキサンにエンジンカバーや風防をつける改造してゼロ戦っぽいのを造って実際に飛ばしちゃってること!

童友社 1/72 航空自衛隊 T-6G テキサン プラモデル DXB-3
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童友社 1/32 大戦機シリーズ 日本海軍 零戦21型 プラモデル
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米軍機も壊れた飛行機を修理して飛ばしたそうだ。

本物の空母を改造した赤城からのゼロ戦発進シーンは凄く美しい。

ハセガワ 1/350 日本海軍 航空母艦 赤城 プラモデル Z25
ハセガワ 1/350 日本海軍 航空母艦 赤城 プラモデル Z25

パイロットたちは撮影中は指示が聞こえるように無線通信をオフにしておく約束で、カットと共に皆が一斉に話し出す。
それも一頻になった時に、パイロットの誰かが台本を読んでいて、ト書きの「ワタナベスマイル」というのを気に入ったらしくて何度も言う。
なので空撮終了毎に「ワタナベスマイル」というのがカットの合図になったそうだ。

ところが編隊飛行をしていた時に民間機が突然その正面から飛んでくるトラブルがあった。
空中衝突を避けるためにフォーメーションどころか皆がパニック状態でバラバラになり、
無事に落ち着いた時に誰かが言った
「ワタナベ シット!」
(オーディオコメンタリの翻訳やってる奴は「ワタナベ ビビル」とか正にシット=クソな訳してるけど。)

胴体着陸をホントにやった「すばらしいパイロットだ」ってリチャード・フライシャーは言ってる。
片輪でタッチしてるカットは本物の飛行機だけど、着地は流石に危険だから模型じゃね?って思ったが。
コマ落としで解析するに、
・右翼プロペラが滑走路に接触し停止時に先端が歪んでいる
・片方だけ出ている車輪が重量でひしゃげている
・途中で赤い車両のようなものが一瞬だけ映り込んでいて、それを通常の車両サイズだとすると実際の飛行機とのサイズが合う
という要素から実写と判断しなおした。

でも、「これってホントの事故の映像じゃねえか?」って思うカットがあったけど、やはり半分は事故だったのも解った。

1時間27分個所のシーン。
航空基地をゼロ戦に襲われて、迎撃の為に飛び立とうとした米軍機が撃たれて爆発し、滑走路横に並んでいる飛行機に次々誘爆していくシーンで、
燃えている飛行機が自分たちの方に突っ込んできた挙句に爆発し破片をまき散らしているので、
兵隊が逃げる途中で転倒して、慌ててよつんばいになって逃げていたり、
車の蔭に隠れて突っ込んできた飛行機や燃え上がる機体から身を守ろうとしてるシーンがある。
正に間一髪な感じ。迫力すげえな!これマジで危険じゃん!って俺は観てて思った。

インタビューアが最初に聴いた時は監督が返事しないで誤魔化してる様子なんだけど、しつこく聞いたら丁度そのシーンの前で白状してた。

巨大な飛行機型のラジコンを造って「滑走路を走ってる最中に襲われた体で爆発する」ってのが本来予定してたシーンで、
スタントマンは奥から順に誘爆される並んだ飛行機から逃げるって段どりだった。
で、実際の撮影をしたら、飛ばない筈のラジコンが飛行してしまった!(苦笑
地面を走っている状態ならば方向を変える操作ができる車としてのラジコンだったのだが、空中では何もできない。
危ないので爆破を指示したら、飛んだ方向が左側で、其処には火薬を搭載した飛行機の列とスタントマンたちが!
何度も逃げる練習をしていたスタントマンたちだが、全く違う事態が発生し、蜘蛛の子を散らすように彼方此方に全力疾走で逃げている。
これ、一歩間違えれば映画史の大きな汚点になる程の大惨事だぞ!

>「幸運だった。
 これで誰か死んでいたら私は大悪人になるところだった。」

って、リチャード・フライシャーてめえ!

撮影中に事故はなかったそうだが、改造機を飛ばす訓練をしている最中に2人が亡くなっている映画だ。
1人は丘にそって急上昇するのを5、6回繰り返した後に、最後の練習で機体を起こせず丘に衝突した。
もう一人は安全管理者ジャック・カナリア。東海岸からカリフォルニアまで飛行機を操縦して運んでいる時に中西部で嵐にあって墜落。

魚雷が水柱をあげるシーンも火薬が湿気るので一時間半ごとに交換するとか危険な事を結構やってる。

ミニチュア撮影とかもしてるけど、戦艦のは12mもある。

日本で創った長門のセットは200m長で高さはビル10階建て規模。

ハセガワ 1/350 日本海軍 日本海軍 戦艦 長門 レイテ沖海戦 プラモデル 40073
ハセガワ 1/350 日本海軍 日本海軍 戦艦 長門 レイテ沖海戦 プラモデル 40073

アメリカのアリゾナは100万ドルかけて実際の船3隻の上にセットを乗せて造ったので外洋まで実際に動ける。セットの長さは92m、高さ43m。
アリゾナの高いマストが折れるシーンを撮りたかったらしいけど、撮影当日に大道具がマストを倒す事はできるけど、倒れた先は保証できないって言ったそうだ。マストが倒れる先は甲板なのでマジで撮影用の船も穴が開いて沈没する危険がある。
ということで、アリゾナが傾いてマストが折れてるシーンは諦めたそうだ。

リチャード・フライシャーが原作で事実を集めてあるのが映画として嘘に見えるので使わなかったってのが、

溺れている3人の水兵を将校が助けようと水に入って2人は助けたけど3人目を助けるには体力がつきたので、それを伝え謝ったら、
若い水兵が「結構です」って敬礼して沈んでった。

御伽噺だろ!

溺れてる筈の水兵が其処までしゃべれる余裕あるんだったら自分で泳いで助かるわバーカ!

しかも海水で浮いて居ようと思えば結構に長い時間浮いてる事は出来る。

救われたのが二人いて証言したとしても、どうせ見捨てたのを誤魔化すために口裏合わせたんだろ。

不可解な矛盾個所をつけば嘘かどうかなんて普通は判断できるわなあ。

「こう言ってる人がいる」ってのは矛盾が無い場合にのみ証拠として使えるもんだろ。

リチャード・フライシャーは日本側の演技がトーキー時代の喜劇みたいな程にオーバーに見えたらしいけど、今のハリウッド映画ってもっと酷いと思う。

ただ日本はフィルム節約の為に長回しをしないので細かくカット割りする癖についてはその通りだと思う。
台詞をいう人物にフォーカスしてそれをカット毎に切り替えるとか小津安二郎作品とかでも顕著だよね。
アニメでは非常に多いけど、マンガもその影響か、コマの中に人物一人しか描かないみたいなのも増えてる。
だけど編集してる側からすれば「しろ」がないので困って日本側に注文をつけたそうだ。

苦労話といえば、ロケを68日で終了したのは驚異的だけど、スタジオ撮影でのフロントプロジェクションにてこずったらしい。
この時代はリアプロジェクション、ホリゾントを使用したブルーバックでの合成が主体だったのだが、
FOXが開発中のフロントプロジェクション機材が微調整を繰り返す必要があるのと、カメラには映ってもホリゾントと違って人間には何が映っているのか見えない点で使いづらかったそうだ。
日本でもプロセス撮影担当の深作欣二が苦労したそうだ。

劇中では「無線が通じません」の台詞だけで普通電報で日本軍が真珠湾を攻撃する事を伝えようとする形になるというくだりがあるのだが、
無線が通じなかったのは太陽黒点のせいだとオーディオコメンタリでは言ってる。

でも劇中にもあるように、これは奇襲攻撃ではなくて、米軍はエニグマで日本軍の通信暗号は筒抜けだったのに、
米政府が故意に戦争始める切欠の為にハワイを犠牲にしたんじゃねえの?

一方で初代「水戸黄門」東野英治郎が演じる南雲忠一が航空戦に疎く、敵の攻撃力含めて空母を舐めてたせいで、結局は後々に甚大な被害を出す敗戦に結びついた。

水戸黄門DVD-BOX 第一部
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真珠湾の後に如何アメリカに手を売っておくかの展望もないまま喧嘩ふっかけた形だしなー。

日米双方の無能な指揮官のせいで多くの犠牲に繋がったとしか言いようがない。

トラ・トラ・トラ! 製作四十五周年記念版 アルティメット・ブルーレイBOX (1,000セット完全数量限定) [Blu-ray]
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posted by wolf_howling at 07:43 | Comment(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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