2019年09月19日

藤子・F・不二雄大全集 [28] モジャ公 ーSFは何度死ぬ?ー

講談社『週刊ぼくらマガジン』1969年創刊号(11月18日)から連載された。

藤子・F・不二雄大全集 モジャ公
藤子・F・不二雄大全集 モジャ公

ぼくらマガジンは1971年に廃刊となるが、廃刊寸前に『仮面ライダー』を掲載していた雑誌だ。

仮面ライダー(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)
仮面ライダー(1) (石ノ森章太郎デジタル大全)

他の連載作品も廃刊後はマガジン本誌にうつるものの、前身の「ぼくら」から連載されていたタイガーマスク。

タイガーマスク(1) (週刊少年マガジンコミックス)
タイガーマスク(1) (週刊少年マガジンコミックス)

さいとう・たかをのバロム・1

[まとめ買い] バロム・1
[まとめ買い] バロム・1

永井豪の魔王ダンテが掲載されていた雑誌だ。

魔王ダンテ 1 (KCフェニックス)
魔王ダンテ 1 (KCフェニックス)

確かにハクション大魔王や、天才バカボンも掲載されていたのでギャグまんがが無かったわけではないのだが、

ハクション大魔王 DVD-BOX
ハクション大魔王 DVD-BOX

天才バカボンBOX 1~7(7点7冊セット) (竹書房文庫)
天才バカボンBOX 1~7(7点7冊セット) (竹書房文庫)

モジャ公も「ぼくら」という少年誌名とは乖離したダークでハードな読者層という、多分に編集者の意向をうけてか、グロ含めたブラックジョークは多目だ。

「恐竜の星」の回ではロボットのドンモが恐竜にボリボリ、バリバリとの擬音で食われ、
口から血しぶきのようなものまで撒き散らしてる絵のコマの後に

>空夫「ざんこく…」

モジャラ「これはギャグまんがじゃなかったのか?」

空夫「作者は頭がおかしいんだ!」

モジャラ「少しでも人気を取ろうと思って。」


という、藤子Fの「だったらこれならどうだ!(笑)」的なヤケクソっぽいブラックジョークや第四の壁突破もある。

ドラえもん てんとう虫コミックス 14巻収録「無人島へ家出」で、
のび太が10年の歳月を無人島で過ごした後に

>「どうなってんの?ぼくがおとなになったら、このまんがおしまいじゃないか! うわー」


とメタ発言するのは、あまりの意外性から子供心にも残る最高のコマ&ギャグなんだけど、それに似たものは既に使っていたんだなと。

ドラえもん (14) (てんとう虫コミックス)
ドラえもん (14) (てんとう虫コミックス)

本作に出てくるオットーという宇宙人は、フォルムがドラえもん「未知とのそうぐう機」に出てくるハルカ星人に継承されている。
アザラシと思われて、のび太ママに箒で掃きだされてるアノ人(笑)一つ目になってはいるけどね。

ドラえもん(17) (てんとう虫コミックス)
ドラえもん(17) (てんとう虫コミックス)

モジャ公のマンガ概要は地球人の空夫が、宇宙人モジャラ、ロボットのドンモと宇宙に「家出」する概要。

割と陰鬱展開の繰り返しででギャグもスカッとする感じはない。
この全集では表紙を後ろに纏めて掲載しているせいで、解りにくいが、本来は藤子Fには珍しく続き物でのストーリー構成作品。

でも、藤子F自らが「僕は短編作家」と言い切るだけあって、やはりモジャ公 は中途半端な印象を受ける。
続編だからこそのサスペンス仕立てのつもりも、「どうせ…」って展開が読めちゃうので、
迫真のグロシーンとかも「結局は無事だろ」と無駄な引き延ばしに見えてしまう。

グロといえば、全集の中でもこの本は、打ち切り作品なのと単行本収録時の書き直し個所があるので掲載方法が割と変則的。

P599では鳥の様な顔をした宇宙人が、隣にいた(=おそらく何らかの知人であろう)豚のような宇宙人を死体からとったナイフで「ちょっと 切れあじをためさせろ。」とズブと刺し殺してしまう。
P600で路に倒れている死体に豚宇宙人の死体を重ねて「いかす!」という鳥頭も、背後から襲われ死亡して更に死体として重なる。

印象的なブラックユーモアなのだが、てんコミでは許されなかったのだろう。

この編集方法だけど俺は、各扉絵はしかるべきそのままの場所で掲載すべきだと思う。
台詞の入っている扉絵もあるので、それら1ページの大コマの持つ演出の魅力があったのに、それを後ろに纏めて「特別資料室」だの銘打って並べるとは、編集者が無能の事例がまた一つ形になって残った。

ところで、巻末近くには『たのしい幼稚園』掲載の殆ど2ページもののカラー作品が載ってる。
コレの出来が見事!
やっぱり、藤子Fは「児童向け」「短編」「メルヘン的な明るい愉快」が圧倒的な方なのだと、正に明暗を分けた象徴的なものになっている。

「すこしふしぎ」にしても意図して重苦しくしようとしてるので出来はイマイチだなあって思ってた作品が
「うちゅうまんが モジャ公」で沈んだ気持ちが明るくなる事で救いがある構成に偶然なっている。

「うちゅうまんが モジャ公」最終回は
ロケットが墜落して壊れ、泣いている3人に始まり、「ここはなんという星かしら?」と言ってみるも、
トナカイ型ロケットに乗ったサンタと出会い「ここは地球だよ」と教えられる。
「そらお」は家に帰る。

だけど、そのラストのコマで笑ってしまうのが、
「ただいま」とプレゼントと共に空から降ってくる3人を微笑みながら迎えてるのが、ぼくら版の父母のデザインと違って、
眼鏡をかけた見覚えのあるママ…

これ、のび太のパパとママだろっ!!!WWW

「うちゅうまんが モジャ公」は1970年1月号〜12月号掲載。
つまりは、奇しくも小学館の学年別学習雑誌1970年1月号にドラえもんが掲載開始されていたので、
打ち切りマンガであるモジャ公 の方はキャラの統一すらも最終回にはテキトーにする位には「雑な扱い」なのに笑ったのと、
もしかしたら「サンタさん!これ、ドラえもんのいる家だよ!」ってオチになるのかも?とか、
解ってる人向けのリドルストーリーにも思えた。

さて、エントリのサブタイとしてつけた「SFは何度死ぬ?」について。

本作には中央公論社の愛蔵版によせた藤子F自身のあとがきが掲載されていて、
「あとがきにかえて ”モジャ公”誕生の顛末」で

>言われる前に自分で言っとくけど、実はこのモジャ公は”21エモン”の二番煎じです。


から始まる。

21エモン (1) (てんとう虫コミックス)
21エモン (1) (てんとう虫コミックス)

藤子FはオバQで作った以降のパターンは
「SF(ごく広い意味での)生活ギャグまん画」
と述べている。

新オバケのQ太郎 (1) (てんとう虫コミックス)
新オバケのQ太郎 (1) (てんとう虫コミックス)

一方で舞台が21世紀トーキョーだった事が21エモンの明暗を分けたのでしょうか、とも。

CoCと訳されるクトゥルフの呼び声 (TRPG) が1920年代アメリカ設定のシナリオでなく、クトゥルフ神話TRPG現代日本物の二次創作が動画で普及してからTRPGが再ブームになったが、やはり身近な感覚というのは大切なのだろう。

新クトゥルフ神話TRPG ルールブック
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海外ファンタジーでもハイファンタジーは「ゲーム・オブ・スローンズ」で復権したが、

ハリポのようなエブリデイ・マジックの方が子供達には親しみやすいのは当然。
二匹目の泥鰌やハリポ続編がイマイチ振るわないのも、
読者の成長でエブリデイ・マジック児童書からハイファンタジードラマや映画にシフトしたのかもしれない。

ゲーム・オブ・スローンズ 第一章~最終章 ブルーレイ コンプリート・シリーズ(初回限定生産) [Blu-ray]
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ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生 [Blu-ray]
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既に『21エモン』設定時の2018年を過ぎた21世紀東京に俺は住んでいるのだが、
宇宙人で地球が溢れかえる事には、ドラえもんのいる22世紀の未来にも無さそうw

>作者が面白がって書いたわりには、読者は面白がってくれなかった。

>ま、よくあるケースです。


とは口ではいいつつも、藤子Fは書き残した材料に、どうにか日の目を見せたかったのだろう。

一方でこうも記している。

>何しろ舞台は宇宙。何を書いても文句のない世界。思うままに空想の翼をひろげて楽しむことができました。「さあ、彼等はこれからどんな運命をたどるのだろう?」とワクワクしながら書いたものでした。でも結局、今度も面白がったのは作者だけということに……。


つまるところ、今を去る事30年近く前までは「SF」と称せば、科学でないにも関わらず割と出鱈目やり放題だったのだ。

当時までは早川や創元などでもSFとファンタジーに細かい区別すらないような雑な状態に等しかった。

まあそれの5年位前にも「ガンダムはSFじゃない」ってダーティーペア作者が言って、SNSもない大昔なのに炎上したりもしてた。

第1話 ガンダム大地に立つ!!
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ダーティペア COMPLETE Blu-ray BOX [初回限定版]
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で、こないだあったのが

>「彼方のアストラ」はSFじゃない!論争に見てる人が反論『ミステリだろ?』『萩尾望都だろ?』
https://togetter.com/li/1404950

彼方のアストラ Blu-ray BOX 上巻
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コレも昔から繰り返される古参と、ユルい設定でやりたい作家側との何度も繰り返された蛍光だよなあと。

甲賀三郎が「本格派探偵作家」として、平林初之輔は江戸川乱歩や横溝正史をつかまえて「不健全派」って呼んで抗議をうけたり。

甲賀三郎作品集: 全17作品を収録 (青猫出版)
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博友社の雑誌『新青年』を廃刊にまで至らせた「探偵作家抜打座談会」事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8A%9C%E6%89%93%E5%BA%A7%E8%AB%87%E4%BC%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6

『SFマガジン』誌上の匿名座談会で
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%86%E9%9D%A2%E5%BA%A7%E8%AB%87%E4%BC%9A%E4%BA%8B%E4%BB%B6
編集長の福島正実、副編集長の南山宏が石川喬司、稲葉明雄、伊藤典夫は、
星新一、小松左京、筒井康隆、平井和正などをこきおろし、

星新一は

>飼い犬に手を噛まれるという話はあるが、この場合は、飼い主のほうが、犬の尻に噛みついたようなものだな

と、彼らしい皮肉を言ったそうだ。

ファンタジーについても同パターンが溢れかえる惨状について、異世界チートもの、なろう系、ナーロッパとの設定揶揄がある一方で、
擁護派からはジャガイモ警察(や、アニメ等の弓道警察)などと呼ばれる層との対立が繰り返されている。

好き勝手設定をやるために「SF」だの「ファンタジー」だのという免罪符を使いたがる作家と、
「科学知識」や「理論」からの論破から、「単なる好き嫌いでしかないもの」で誹謗中傷したい読者まで含むものの間のバトルは、
珍しくも無いし、多分にトレンドが変わった後でもまた繰り返される。


でも、モジャ公は1969年作品だけど
「スペクトルぶんせき」とかは書かれてたりも。
気使いの差ってのはあるのよ。
まあそれにしたって「知識が作家側になければなんともなりようはねえ」けど。

アポロ11号が月面着陸したのは1969年7月20日。そういう時代をバックにした「色々と自由な時代の」宇宙ものだったということ。



アポロ
アポロ


posted by wolf_howling at 05:13 | Comment(0) | マンガ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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